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うつ病

ある患者さんがうつ病から回復して、少量の維持的薬物療法で経過観察となった時期におっしゃいました。

「先生、メンタルクリニックっていうのは、結構立派な感じの患者さん多いですね。ビシっとスーツに身を固めたビジネスマンの方とか、若くておしゃれな感じの患者さんまで、どこが調子悪くて通院しているのか検討もつきません。私自身にしても、未だに自分が本当にうつ病になったなんてしっくりこないというか、正直な所、自分だけはうつ病なんかになるわけがないと思っていましたから。」

うつ病の不思議な面を、上手く捉えた発言だと思います。

 

また、一方では、別の患者さんのこんな発言も印象的です。

「私は、確かにうつ病かもしれません。夜も眠れないし、集中力もない。職場でも仕事をしているふりをするのが精一杯で、実際は何も手につかないのです。しかし、薬だけは飲みたくないのです。だいたい、薬で考え方が変わるとか脳が変化するとは思えないし、逆に変化するのであれば、怖くて飲めません。とにかく、薬を使わないで治療したいのです。」

薬で考え方が変化するなんて、社会的に倫理的に許されるのでしょうか?もっともな考え方だと思います。しかし、ほとんどの精神科医は薬物療法に積極的であり、薬の効果を信じており、精神科医のはしくれである私にしても、薬物療法をおすすめしています。もちろん、行動療法や生活療法、カウンセリングが有効である事も重要です。薬をのみたくないという患者さんに、運動療法を指導した事がありますが、やはり、うまくいきませんでした。その患者さんは2週間ほど、ある程度の運動を試みたのち、おっしゃいました。
「先生、運動でうつ病が治るとは思えないので、運動は止めました。」

実際の所は、薬物療法と運動療法の両方に取り組めた場合の改善率は明らかに良好で、運動療法に効果がある事は間違いありません。しかし、うつ病となってしまった時期に、運動に取り組めないのも現実です。

うつ病は、最も人間らしい病気だと思います。情けなくて悲しくてどうしようもまなくて、頑固で依怙地でへそまがりで、控えめで謙虚で奥ゆかしくて、ウソッっぽくてズルくて卑怯者で、苦しくてつらくて絶望的だったりします。

そして、人間だからこそ、また、反省して、回復して、やり直す事ができるのだと思います。