2018年10月22日(月)より、近赤外光を用いた神経活動に伴う脳の血液変化を計測する装置を導入します。機能的近赤外光分光法 fNIRS と呼ばれる技術を応用した検査法であり、Functional Near Infrared Spectroscopy 光トポグラフィーと呼ばれています。
光トポグラフィー検査は、心の状態と脳の働きを見る検査です。心の病は、脳の働きと関係しています。何かを考えたりして脳が働くと、そこに血流が多く流れます。この検査では、その血液の変化を測定することで、心の様子を知ることができます。
まずは、検査装置の原理について説明します。生体の中で、可視光と近赤外光を吸収する主な物質は水とヘモグロビンですが、波長によって、Oxy-HbとDeoxy-Hb では吸収が異なります。そして、神経活動が起こると、その周囲にある血管が拡張します。エネルギー源となる酸素やグルコースを含む動脈血を供給する調整機構が働くのです。つまり、 活動神経近傍の組織では血流量(血液量)が増大するので、脳血流変化を捉えることで神経活動を見ることができます。
光トポグラフィー検査は「抑うつ状態の鑑別疾患補助に使用するもの」として、2014年4月から保険適用が認められています。2009年に認められた先進医療「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」の5年間の実績について、先進医療会議と中央社会保険医療協議会(中医協)による検討に基づいた適用です。ただし、残念ながら保険適用には高いハードルが設定されており、当院では自由診療として検査を行わなければなりません。検査料金は¥5,000-です。
検査実施方法ですが、言語流暢性課題を行い、前頭前野の波形判読にて評価します。計測部位である、前頭前野は精神医学的には非常に重要な部位であり、多くの精神障害との関連が指摘されています。検査プロトコルである、言語流暢性課題としては、課題前に「あいうえお」を発声していただき、30秒間、一定速度で繰り返します。次に、課題として頭文字が提示されますので、20秒間、できるだけたくさんの単語(提示された頭文字で始まる単語)を発声してください。20秒ごとに3つの頭文字が与えられ、3回で合計60秒間の課題にとりくみます。課題後は、ふたたび、「あいうえお」の発声を、70秒間一定速度で繰り返していただき、検査終了です。検査に要する時間は、検査器具装着時間も含めて30分程度です。
検査の位置づけとしては、あくまで、治療目的で検査を行います。「治療は必要ないけど、検査だけは受けてみたい・・・」といったご希望には対応できません。通院治療の中で、検査の必要性があると判断された場合に検査を実施します。治療目的である事が重要です。